遺産分割問題解決の流れ
さて、相続が発生して、遺産分割を行う場合、大きく分けると次の2つの流れがあります。
相続発生 → 遺言がある場合 原則として、遺言の内容に従って相続する
→ 遺言がない場合 法定相続人で協議を行い､法定相続分に従うか､各人の相続分を協議で定めるかし､それに従って相続する
遺言がある場合
被相続人の遺言がある場合は、原則として、遺言の内容に従って相続します。
しかし、遺言書に不備があったり、本人が書いたものであることが確認できない場合などには、遺言の効力が認められないことがあります。
また、例えば、兄弟が3人いるのに「長男に全てを相続させる」というような内容の場合には、他の兄弟2人は遺留分を侵害されることになりますので、長男に対して、遺留分減殺請求を行うことができます。
遺言がある場合で、その形式に疑いがあったり、内容がおかしいと思われる場合には、弁護士にご相談ください。
なお､仮に遺言によって、遺留分が侵害されている場合でも、遺留分の減殺請求をするには期限がありますので、期限を過ぎて放置すると、請求が認められなくなります。ご注意ください。
遺言がない場合
被相続人の遺言がない場合には、法律によって定められた相続人（法定相続人）全員が遺産分割に関する話し合いを行い､合意した内容を遺産分割協議書にまとめ､これに従って相続することになります。
遺産分割が終了するまでの流れは次のようになります。
① 相続調査 → ② 遺産分割協議 → ③ 遺産分割調停 → ④ 審判
＊相続人の範囲や相続財産の範囲､遺言の有効性に争いがある場合は､ ⑤ 訴訟 を行うことになります。
相続調査
遺産分割協議にあたっては、相続人（法定相続人）と相続財産（遺産の内容）の確定が必要です。まず､被相続人が生まれてからお亡くなりになられるまでの全戸籍を取り寄せ､かつ､相続人全員の戸籍を取り寄せるという作業を行い､相続人を確定することになります。遺産分割協議が終了した後に、新たな相続人が見つかった場合などは、それまでの協議が無効になってしまいますので、注意が必要です。
また､相続財産の範囲に争いがある場合などは､遺産確認訴訟という裁判で遺産の内容を確定しなければならないことがあります。そのような可能性がある場合は、あらかじめ、専門家である弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
遺産分割協議
相続調査によって、相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。これは、全相続人による話し合いです。話し合いがまとまった場合は､遺産分割協議書を作成し、これに従って遺産を相続します。
遺産分割調停
相続人間の感情的な対立があるなどして遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停とは、簡単に言うと、裁判所の調停委員を仲介者とした話し合いの手続きです。調停とは遺産分割協議と同様､相続人間で話し合いを行うものですが､調停委員という中立的な第三者が間に入って話し合いの交通整理をしてくれますので､当事者だけでは話し合いが進まなくなってしまった場合などでも､話し合いを前に進めることが可能になります。
また､調停まで利用する場合には､法的な問題が絡んで対立が生じている場合も多くありますので､弁護士を付けた方が良いケースも多いといえます。
調停は､裁判所内で､対立する他の相続人と顔を合わせることなく進めることができますので､その点でも利用しやすい制度といえます。
審判
調停が不調（不成立）になった場合、審判手続きに移行します。裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、審判を下します。審判に不服がある場合は、2週間以内に抗告する必要があります。
審判では､法的な問題が争点となることも多いですので､その場合には弁護士を付けた方が良いでしょう。
訴訟
遺産分割の前提となる法定相続人の範囲や、相続財産の範囲、遺言の有効性などに関して争いがある場合は、調停などで話し合いを重ねても平行線となりますので、訴訟を提起する必要があります。訴訟手続きは複雑で､専門性の高い内容が争われますので､弁護士を付けるべきです。
遺産分割を行う場合、特にすでに揉めている場合や、揉める可能性がある場合は、上記の解決までの全体像を見越した上で、最適な解決方法を考える必要があります。
調停外の話し合いで解決を目指した方が有利となるのか､調停を利用した方が良いのか､訴訟を提起しなければ解決できない問題を含むのか､などはケースバイケースです。
当然、弁護士にご相談いただく場合には、これらの全体像を踏まえて、最適な解決方法をアドバイスさせて頂きます。
